片側腎臓と子宮の欠損犬

2013-10-01

6歳雌のMダックスフンド、乳腺腫瘍摘出前の検査中に右腎臓が欠損していることが判りました。左腎臓は健常で手術、生活に支障はありません。乳腺腫瘍摘出手術は当院の場合よほどリスクが無い限り子宮卵巣も同時摘出することが多いのですが、今回もその予定で手術に入ったのですが驚きです。左右卵巣はあるのですが左右子宮角が無いのです。そして検査通り右腎臓も欠損し肉眼状 痕跡すら見当たらない状態です。発生学的に子宮、腎臓は同系統で、この発生段階で何らかの障害が起きたものと推測しました。病理医の組織所見は下記の通りです。

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【病 理 所  見】

右側の子宮角は、組織検査においても正常な子宮構造は確認されず、膜状の管腔構造のみが観察され、子宮内膜も確認されません。また、周囲には線維化や線維増生などが認められます。左側の子宮角では、萎縮した子宮組織が観察されますが、内膜組織は消失しています。

卵巣では、いずれも軽度に萎縮していますが、黄体の形成や卵胞の形成が確認されます。

 

【予  後】

先天性の疾患と診断されること、腫瘍性の変化は観察されないことから避妊後は臨床的な問題はありません。

 

【コメント】

子宮は、発生学的に左右の中腎傍管(ミューラー管)から形成されます。発生段階において、このミューラー管の発達に障害が発生すると、子宮に種々の奇形が発生します。特にイヌでは、単角子宮、あるいは子宮角の部分的融合などの奇形が多いと報告されています。

本症例では、右側の子宮角はほぼ消失し、左側は高度に萎縮しています。しかし、組織検査では炎症性や傷害性の変化は確認されないことから子宮の形成異常あるいは分化異常などの先天性疾患と診断されます。ただし、形成不全の原因は特定には至りません。

また、卵巣も軽度に萎縮していますが、その他病理学的な異常は観察されません。

予後については、左右子宮角の変化は発生異常あるいは分化異常に関連した先天性の疾患と診断されること、腫瘍性の変化などは観察されないことから避妊後は臨床的な問題はありません。

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ちょっと調べてみました。2007年アメリカ、カナダでの卵巣子宮摘出手術を行なった猫53258頭、犬32660頭での肉眼的子宮異常は猫0.09% 犬0.05%であり、同側腎欠損(犬6/12)存在したとのこと。卵巣、子宮摘出手術(避妊手術)は毎日のように行なう手術ですが、単角子宮(片側だけの子宮)は過去に数例経験していますが片方腎臓欠損を伴っている例は今回初めてでした。この症例、乳腺腫瘍(複合癌、悪性腫瘍)摘出後も元気で生活しております。

IMG_0795卵巣を摘んでいる所。

IMG_0797摘出した卵巣。子宮が無い。

IMG_0825これは他の犬の卵巣と子宮。正常です。

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