睾丸(精巣)捻転ID:1235457705-

睾丸が腫れている13歳の柴犬が来院しました。一見すると年齢からも腫瘍が一番に疑われます。触診では硬結腫脹していますが痛みは訴えませんでした。血液検査の結果からは炎症が強く疑われます。この様な場合、睾丸摘出が治療の第一選択肢となります。麻酔下にて切開を進めると多量の液体の中に赤黒く変色した睾丸が見えます。睾丸の根元(精索)が捻れ血行障害のため壊死しているのです。睾丸(精巣)は陰嚢内で導帯等で付着してある程度固定されています。精巣捻転(精索捻転)は人ではちょくちょく見られるようですが、犬では珍しいかと思います。捻転した時はこの柴犬、非常に痛みがあったと思いますが....常に動物の訴えに耳を傾けてやって下さい。

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摘出した睾丸。右が正常、左は捻転のため血行障害を起こし壊死した睾丸。

— posted by shimoe-s at 03:41 pm  

内視鏡検査ID:1235292664-

数ヶ月前より、食欲はあるが吐いて困るという8歳の犬が来院しました。食事抜きで初めから内視鏡検査目的で来られたようです。麻酔がかけられるかどうか血液検査など含めて診察した結果、午後の検査.手術時間中に行うことに決定。全身麻酔下で食道から胃内を観察していくと胃の出口(幽門部)に腫れ物が見られます。さらに検査を進め十二指腸を観察します。画像上では大きな異常は見当たりません。でも組織的には異常がある場合がありますので十二指腸部と胃の腫れ物のバイオプシーを行いました。検査は10分少々で終わります。採集した組織は専門の病理検査センターへ送り診断してもらうことになります。後日検査結果は、胃の腫れ物は腺腫様ポリープ(非腫瘍性病変).十二指腸は炎症生腸炎またはリンパ管拡張症の疑いと言う診断。腫瘍性、悪性所見は確認されなかったので、ひとまず安心です。でも今回は一部の組織採集の結果であること、深層部に腫瘍性の病変が隠れている場合もありますので臨床経過は診ていかねばなりません。このようなポリープは胃炎が慢性化することで粘膜の過形成が生じた結果だと思われます。今、10日程経過しましたが胃腸薬の内服のみで嘔吐も無く療方食を美味しく食べています。しかし再び胃腸障害が起きるようなら、ポリープの内視鏡下摘出と再検査が必要になるでしょう。緊急疾患は別として内視鏡検査などは胃の中がカラッポ(絶食)の状態が必要です。あらかじめ診察と予約をさせて下さい。
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十二指腸を見ています
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胃のポリープ

— posted by shimoe-s at 05:51 pm  

膀胱、尿道結石ID:1235130294-

膀胱、尿道に結石が出来る病気は日常的によく診ますが、今回の雄犬の膀胱尿道結石は、長い間、尿道に結石が不完全閉塞していたため、尿はペニスの先から出るのですが、肛門下部の皮膚からも尿が滲み出る状態でした(婁管形成)。膀胱尿道の結石を全部摘出した後、尿道から皮膚に繋がっている道(婁管)を取り除かねば問題は解決しません。滲み出る部位は簡単に見つかったのですが、切除するとなると尿道が狭くなり、将来、尿道狭窄が起き排尿困難となる恐れ大のため、今回は陰嚢部尿道婁設置術(人工尿道口)を施す結果になりました。雌犬と同じ様な陰部に整形し排尿も順調です。排尿障害を起こす病気は色々ありますが、結石に起因するものが多い昨今です。食事療法などにより結石を溶解出来る場合もありますが、概して手術で摘出となることが多いのも事実です。排尿障害が認められたら早めに受診を。
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陰嚢部尿道婁設置術後、グロテスクですが毛が生えてくれば変ではありません。

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写真の結石はこの犬のものではありません。

数年前に摘出した重さ250gの膀胱結石
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今までに摘出した結石の数々(色々な種類があります)

— posted by shimoe-s at 08:44 pm  

老ネコ テンテンID:1234696399-

19歳の老ネコ、名前がテンテン。このところ腎臓の働きが悪くなり定期的に点滴に通ってもらっています。本来なら血液の数値からいっても入院治療が良いのですが、歳老いた動物の入院は環境の変化等で余計に病状が悪化する場合があるため、相談の結果通院してもらっているのです。19年前の春、美容院をされてる飼主さんのお店裏の暖かいボイラーの側でミャーミャーと鳴いたのがテンテン。朝お店に出勤すると急いで足元に寄って来て食事を催促し食べ終わるとボイラーの陰に戻り休むという日々が続き、いつの間にか家族の一員となっていたそうです。これまで避妊手術と少々のケンカ傷ぐらいであまり病気もすることなく、ここまで生きてきました...。点滴の最中、テンテンとの出会いのことを聞きながら、どなたでもそうであるように、長く一緒に暮らしていると、深い愛情や厭うしさ等何事にも替えられない深い深い情を持ちます。私たちは言葉の端々や表情にこれらを強く感じ受け、仕事への情熱となりますが。そのテンテンも点滴だけではかんばしくなくなり貧血もあることから、今日は輸血の為やむなく短期入院となりました。下の写真は当院のズーちゃんより輸血のため血液を採集しているところ。テンテンはA型なのでズーの血液が役立ちます。家とは違い決して快適とはいえないでしょうが、ケージの中でいい子で輸血を受けています。残された時間は長くはないでしょうが、少しでも体が楽になるよう手助けしたいと思っています。

ズーより採血中

— posted by shimoe-s at 08:13 pm  

胃拡張.胃捻転ID:1234319116-

診療が終わり職員一同帰宅の準備をしている時、お腹が張り苦しがっているウエルシュコーギーが来院しました。胃拡張の症状です。早速レントゲン撮影、胃がガスで充満しています。点滴を始め麻酔をかけ内視鏡を挿入、しかし食道から胃に入りません。胃が捻転している証拠です。そのまま開腹手術に移行します。胃捻転のため血流障害が起き胃内圧上昇により胃壁の壊死が起き、近くにある脾臓も引きずられ捻転を起こし出血等も伴います。膵臓も障害を受け心筋抑制因子が分泌され、その為心臓の収縮が減少し不整脈が頻繁に発生します。この犬はまだ早期だったため不整脈は出ていませんでしたが、すでに脾臓は変色し腹腔内は出血を起こしています。胃のガスを抜き捻転を整復し、再び胃捻転を起こさぬよう幽門部(胃の出口)を腹壁に固定します。この犬の場合幸いに脾臓は摘出せずに済みましたが(ほとんどの場合脾臓摘出となることが多い)不整脈も出ず本当にラッキーでした。胃捻転の原因はまだはっきり解明されていませんが、大型犬で胸腔の深い犬に多いとされています。今回のコーギーは小さめですが起きてしまいました。食事や飲水の後は激しい運動をさせないよう、日に3回ぐらいに分けて食事をとらせ、食後は安静にするようにさせて下さい。ほとんど食後に発生しやすいので夕食は早めに与えて下さい。(病院の都合ですが、手術となると人手がいります、診療時間内に対処出来れば....と思ったり....ご免なさい)。単純な胃拡張の場合は注射.薬で治り、手術まですることはありません、念のため。1267.6:320:240:0:0:IMG_1085.JPG:right:1:1::
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循環障害の為、変色した脾臓

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— posted by shimoe-s at 11:25 am  

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