毎日新聞の本日朝刊に下記の文が載っていました。小動物臨床獣医師として狂犬病の危機意識の低下を感じる左近ですので、改めて知って頂くため転載してみました。
狂犬病:予防接種、わずかに4割 侵入許せば流行も--獣医師会など調査
◇中国など多発、専門家警告 狂犬病予防法に基づき、すべての飼い犬に義務付けられている狂犬病の予防ワクチン接種率が実際には約4割にとどまることが、日本獣医師会などの調査で分かった。国内感染による狂犬病は50年以上発生していないが、年間約3000人が死亡する中国をはじめ、周辺のアジア各国は発生数が多い汚染地帯。専門家は「いつ日本に侵入してもおかしくない。このまま低い接種率が続けば、侵入後は国内での流行を阻止できない」と警告する。【江口一、永山悦子】
国内では1950年に狂犬病予防法が施行され、飼い犬の市町村への登録と年1回のワクチン接種が義務化された。国内で犬にかまれて発症した狂犬病患者は54年を最後に確認されていない。
半世紀以上、国内発生がないことが人々の危機意識を弱め、近年は登録率、ワクチン接種率とも低下。ペットフード協会の調査による国内の犬の飼育匹数(07年度)は推定1252万匹に上る。そのうち厚生労働省調査による市町村への登録匹数は約674万匹、ワクチンを接種した犬は約510万匹にとどまる。登録率は54%、接種率は41%の低さだ。
獣医師会の大森伸男専務理事は「室内飼育が増え、感染の危険性がないと思い込んでいる飼い主が増えているのではないか」と話す。
世界的には発生が続き、毎年3万~5万人が死亡。特にアジアでは中国やインド、東南アジア、韓国で発生。インドネシアのバリ島では昨年11月に初の感染犬が確認された後、島内に感染が拡大。在デンパサール総領事館によると、今年4月ごろまで狂犬病による死者や、犬にかまれて病院に駆け込む人が相次ぎ、多くの野良犬が殺処分されたという。
◇狂犬病問題に詳しい源宣之・岐阜大名誉教授(人獣共通感染症学)の話 貨物船に同乗した犬や紛れ込んだ野生動物など、検疫を経ていないルートで国内に狂犬病が入り込む可能性は高い。侵入後に国内での流行を抑えるには、世界保健機関の指針に沿って7割以上の犬が、ワクチン接種で免疫を持つ必要がある。現在は非常に危険な状態だ。
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■ことば
◇狂犬病 狂犬病ウイルスの感染で発症する人と動物の人獣共通感染症。すべての哺乳(ほにゅう)類が感染する。人が犬にかまれて感染し発症した場合、興奮、まひなどの神経症状が出て、呼吸困難でほぼ全員が死ぬため、飼い犬へのワクチン接種が重要とされる。日本では70年にネパールへの旅行者1人が、06年にはフィリピンへの旅行者2人が帰国後に発症、死亡した。
狂犬病が国内で発生したら混乱は鳥インフルエンザ、狂牛病の比ではないはずです。
写真提供日本小動物獣医師会感染症委員会会員京葉獣医師会 副支部長 伊東彰二
タイで、狂犬病実態視察時に撮影した写真
赤い所が狂犬病が発生している国です。
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