4歳の雌ミニチュアダックスフントがワクチン注射後、元気が無く階段を上らなくなったと言うことで来院されました。この犬種にありがちな椎間板ヘルニアを疑い、神経学的検査の後レントゲン撮影を行いました。椎間板ヘルニアは否定されたのですが、お腹の中にミイラ化した胎仔が写っています。改めて話しを聞いてみると3ヶ月前に2匹を正常分娩しているとのこと。ミイラ化した胎仔がまだ子宮に残っていることになります。血液検査も異常がなく今回の症状とミイラとの関連性はハッキリしませんが相談の結果、摘出することになりました。が....子宮はすでに小さく元の状態に復帰しています。子宮内に胎仔は見当たらず、腹腔の大網に包まれた状態で発見です。犬ではまれな子宮外妊娠か....と考えながらも癒着した大網と共にミイラ胎仔を取り出しました。その後、卵巣.子宮を精査したのですが大きな異常部位は確認出来ず閉腹終了。通常このような場合、子宮.卵巣も同時に摘出(避妊手術)することが多いのですが、これからもお産させる予定と言うことなので子宮卵巣はそのままにしておきました。今回の件、仮説ですが受精卵が卵管から脱出し腸間膜、大網に着床し初期胎盤の機能を果たし胎仔は発育していたのか...? 取り出したミイラは写真の様に骨格形成が妊娠末期の胎仔と同じく出来上がっているため、恐らく分娩時に子宮破裂を起こし胎仔は腹腔内に脱出し大網に取り囲まれ時間と共にミイラ化し、子宮破裂部位は自然治癒したものと考えますが、子宮の傷跡が見られなかったのは不思議で何ともミステリアスな症例です。今回の件、ワクチン接種が引き金で判った訳ですが、このワンちゃん翌日には元気に退院していきました。
December 27,2009
ミイラ胎仔ID:1261908490- カテゴリー » 動物病院ニュース
— posted by shimoe-s at 07:08 pm
December 20,2009
セルトリ細胞腫ID:1261287238- カテゴリー » 動物病院ニュース
7歳のオス犬、名前がケンジロー、毛が薄くなってきたと来院しました。首、腹部の脱毛と光沢の無いパサついた全身の毛、そしてオスなのに乳首が大きく、皮膚が黒ずんでいます。去勢手術してないのに、あるべき場所に無い睾丸。腹部を触診するとミカン大の腫瘤に触れます。陰睾といって精巣が陰嚢内に下降せず腹腔内などに留まっている遺伝的病態のようです。若いうちに睾丸を摘出しておけば良いのですが、放っておいて腹腔内に長くあると睾丸が悪性腫瘍になることが多い病気です。これは精巣のセルトリ細胞から発生するセルトリ細胞腫が多く、エストロジェンという女性ホルモンを分泌するためオスなのに女性化を起こすようになるのです。ケンジローの脱毛と腹腔内の腫瘤はまさしくこのために起こっている状態です。詳しい検査の結果、幸いに転移、貧血などがまだ起こっていないため、さっそく癌化した睾丸を摘出しました。セルトリ細胞腫の結果、腫れた前立腺の一部と摘出した睾丸を念のために病理検査に送ります。結果は予想通りの病理診断でしたが、悪性の為これからも経過観察はしていかねばなりません。でも春頃までには元のフサフサした毛のケンジローにきっと戻ることでしょう。陰睾の犬は症状が出ないうちに早く去勢手術を受けることが賢明だと考えます。
左が腫瘍化してない睾丸、右がセルトリ細胞腫の睾丸
— posted by shimoe-s at 02:33 pm
December 14,2009
我が輩はシロクロID:1260792701- カテゴリー » 動物病院ニュース
16歳のシロクロ(雌猫)は老齢になり口の病気で悩まされ続けています。2年前は難治性歯肉口内炎のため全顎抜歯し、痛みが無くなり美味しく食事をしていたのですが、最近になり再び食事が摂れなくなり(飲み込めない)とのことで来院されました。口を開けて診ると舌に腫瘍が出来ています。咽喉頭を塞ぐ状態です。病理検査の結果は悪性の扁平上皮癌。この癌は多くは皮膚に発生する悪性腫瘍ですが猫では口腔内の発生率が高い腫瘍でもあります。口腔内の場合予後不良となることが多く治療に悩んだのですが、飼い主さんの愛情と熱意に後押しされ治療をすることになりました。舌根部から先まで腫瘍を含めて舌を半分摘出です。真の積極的治療となると腫瘍の大きさからいって舌を全部摘出することになるのですが、飼い主さんの心情と年齢を考えると今回は舌の縦半分切除となったのです。とは言っても食事を摂るのは困難となるため胃瘻チューブを施し食事を摂ることになります。胃に直接食事が入るため味合うことは出来ませんが、栄養改善が出来シロクロの表情は活き活きとして来ます。今日は定期検診に来られましたが、看護士がすすめたカンヅメを細い半分になった舌で少しづつですが嬉しそうに食べてくれました。この調子で舌の使い方が上手くいくと近い将来、胃瘻チューブの役割は無くなるかもしれません。再発せず美味しくごはんが食べられ少しでも長く生きれることを願います。
クリスマス衣装で今日は来院されました。さらに活き活きしてきたシロクロ。
— posted by shimoe-s at 09:11 pm
October 29,2009
バベシア症ID:1256819720- カテゴリー » 動物病院ニュース
20年来の付き合いのあるSさんが愛犬ダックスフントが“血尿する”と来院されました。診察すると血尿と思われていたのは、黄疸のためのビリルビン尿(濃い尿)です。腹部の触診で脾臓の腫れも診られ、貧血、高体温のため呼吸も荒く診察台の上で“どうにかしてくれ”と上目ずかいで私を見ます。さっそく血液検査とレントゲン撮影。血液で下記の写真のバベシアが確認され、レントゲンで脾臓の腫大も確定。Sさんは元々神戸に住んでおられたため、この病気のことはご存知で私としては治療に入りやすい関係でもありました。(神戸地方はバベシア症の多い所)。さてさて、バベシア症はマダニによって媒介されるバベシア原虫が赤血球内に寄生することによって起こる溶血性貧血です。この溶血は原虫が分裂増殖し赤血球を物理的に破壊すること以外にも別の溶血機構の存在が推測されており病態は厄介なのです。Sさんの愛犬は入院となり原虫のDNA合成を阻害する治療薬をさっそく注射、栄養剤の点滴となりました。しかし翌日にはさらに貧血が進み輸血までしなければならない状況となる始末。4回目の治療薬注射が完了時には薬の副作用も無く、体温も正常となり貧血も改善傾向を示し、黄疸も消失し一先ず退院となり一安心。しかしこの病気、これで終わりではなく再発もしやすいため坑原虫作用がある抗菌薬を暫く服用することと、血液検査は定期的にしていくこととなります。この病気を媒介するダニはごく普通に犬に付着するフタトゲチマダニ.ヤマトマダニ.クリイロコイタマダニ.ツリガネチマダニなどが知られています。草むらに入りダニに咬まれないようにすること、病院用のダニ駆除剤を定期的にすることなどでこの病気を防ぎましょう。バベシア虫体の自然感染後の潜伏期間は2~4週間です。ダニが付いていた、尿の色が濃い、熱が高いなどの症状がある犬は診察を受けるようにして下さい。
バベシアを媒介するフタトゲチマダニ
— posted by shimoe-s at 09:35 pm
October 19,2009
有毒植物ID:1255955351- カテゴリー » 動物病院ニュース
病院玄関のハナミズキ
— posted by shimoe-s at 09:29 pm
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