ハエウジ症ID:1208781073-

今年も早々ハエウジ症の犬が搬送されてきました。ハエウジ症とは壊死した皮膚、下痢や尿漏れで汚れた陰部周囲にハエの幼虫が寄生し、壊死組織を食い荒らす酷い状態のことをいいます。来院した犬は老齢の為、衰弱して立つことも出来ず、床ずれ(褥瘡)があり、肛門周囲は糞尿で汚れています。長毛のため皮膚の状態が判らなかったのでしょう。バリカンで毛を刈っていくとウジが無数に縦に皮膚にくいこんで動めいています。何十例と診てきましたがゾクッとする瞬間です。ピンセットで一匹ずつ取り出していくわけですが、食事中を邪魔されたウジは逃げまどい、さらに皮膚の奥深く潜っていきます。格闘の末、ほぼ取り終えた後、残存のウジを駆除するため周囲に駆虫剤を滴下し治療完了です。もちろんこのようになった基礎疾患は治療していきます。通常数日もすると皮膚の状態はよくなり動物も痛みから解放されるためか食欲も出てきて健康を取り戻すことが多いのですが、今回の症例は基礎疾患が難治性のようです。ウジで関連があるのがマゴットセラピーです。マゴットセラピーとは治癒しにくい壊死組織に対し無菌のヒロズキンバエの幼虫(ウジ)を用いて治癒を促す治療法をいいます。簡単に言えばウジに壊死した組織を食べさせて健康な組織を早く取り戻させることです。ヒトでの報告では褥瘡に対し従来の治療で壊死組織を半減させるために要した期間が平均4週間であったのに対し、マゴットセラピーを行った平均は1.4週間だったそうです。これを考えると、今回のこの犬のウジを取り去ることはどうだったのでしょう?ハエウジ症と無菌ハエウジを使用した治療を同レベルで語るには無理がありますが、このワンちゃんの場合、汚染された皮膚にウジ寄生のため過敏症を誘発しさらに細胞障害を起こし、痛みに苦しんでた訳ですから取り除く治療が心情的にも良かったものと思いますが、私の頭の中は一瞬マゴットセラピーとしてもう少し壊死組織を食べさせて、それから取り去る方が良いのではという思いが過ぎったのは確かです・・・。ウジの功罪をもっと研究しなければならないとも感じた今日でした。今回のハエウジ症の写真はあまりにもグロテスクで気分を悪くされる方もあるかと思い載せないでおきましょう。

— posted by shimoe-s at 09:31 pm  

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