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膣留水症(膣水瘤)ID:1266725684-

老齢の雌ヨーキー、陰部から膿汁が出るとのことで来院されました。血液検査で炎症反応上昇、エコー検査で子宮腫大を確認。通常、お産の経験が無く発情終了後1~2ヶ月経った頃、何となく元気無く食欲不振で、やけに水ばかり飲む。こんな症状の時、子宮に膿汁などが貯まる子宮蓄膿症をよく診察します。今回もこの症状であった訳ですが手術してみると子宮蓄膿症以外にも膣留水症がありました。膣留水症は先天疾患で膣弁遺残が原因となることが多く、子宮内膜から分泌される液体の排泄口が無い為に膣内に液体が蓄積されて腫瘤となるものです。この症例は膣弁が完全に残るタイプで無かったため陰部より”おりもの”があったわけですが珍しい症例でした。
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写真の左より腫大した子宮蓄膿そして丸い膣水瘤。引っ張っているのが膀胱(膣水瘤と癒着している)。

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摘出した卵巣、子宮蓄膿、膣水瘤。

— posted by shimoe-s at 01:14 pm  

2010年幕開けID:1262494629-

新年明けまして御目出度うございます。本年も宜しくお願い致します。神奈川の動物病院に勤めている娘も帰省し、久しぶりにゆったりと正月を過ごす事が出来ました。4日より平常通り仕事に入ります。

暮れに腸切除したコーギーも食事を催促し喧しいぐらい元気になったので明日退院です。

ドブレの薪ストーブ薪の炎を眺めていると暖かく心穏やかにゆったりと時間が過ぎます。

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— posted by shimoe-s at 01:57 pm  

 

仕事納めID:1262473953-

平成20年も仕事納め...と思いきや。嘔吐、元気なしのコーギー君来院。診断の結果、腸閉塞による腹膜炎。ボールが閉塞し、すでに腸壊死の状態。小腸を40㎝切除し吻合無事終了。この時期このような病気を毎年のように診ます、注意して下さい。  今年も下江動物病院を尋ねて来られました皆様、ありがとうございました。色々ご不満の点あったと思いますがお許し下さい。日々精進してまいりますので来年も宜しくお願い致します。

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すでに腸は変色し壊死状態。黒い重たいボールが閉塞した結果なのです。

いつもグロテスクな写真をアップして申し訳ありません。現実を見て欲しいためなのです。

— posted by shimoe-s at 08:12 am  

ミイラ胎仔ID:1261908490-

4歳の雌ミニチュアダックスフントがワクチン注射後、元気が無く階段を上らなくなったと言うことで来院されました。この犬種にありがちな椎間板ヘルニアを疑い、神経学的検査の後レントゲン撮影を行いました。椎間板ヘルニアは否定されたのですが、お腹の中にミイラ化した胎仔が写っています。改めて話しを聞いてみると3ヶ月前に2匹を正常分娩しているとのこと。ミイラ化した胎仔がまだ子宮に残っていることになります。血液検査も異常がなく今回の症状とミイラとの関連性はハッキリしませんが相談の結果、摘出することになりました。が....子宮はすでに小さく元の状態に復帰しています。子宮内に胎仔は見当たらず、腹腔の大網に包まれた状態で発見です。犬ではまれな子宮外妊娠か....と考えながらも癒着した大網と共にミイラ胎仔を取り出しました。その後、卵巣.子宮を精査したのですが大きな異常部位は確認出来ず閉腹終了。通常このような場合、子宮.卵巣も同時に摘出(避妊手術)することが多いのですが、これからもお産させる予定と言うことなので子宮卵巣はそのままにしておきました。今回の件、仮説ですが受精卵が卵管から脱出し腸間膜、大網に着床し初期胎盤の機能を果たし胎仔は発育していたのか...? 取り出したミイラは写真の様に骨格形成が妊娠末期の胎仔と同じく出来上がっているため、恐らく分娩時に子宮破裂を起こし胎仔は腹腔内に脱出し大網に取り囲まれ時間と共にミイラ化し、子宮破裂部位は自然治癒したものと考えますが、子宮の傷跡が見られなかったのは不思議で何ともミステリアスな症例です。今回の件、ワクチン接種が引き金で判った訳ですが、このワンちゃん翌日には元気に退院していきました。

miruki

子宮内でなく腹腔内に胎仔が...
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大網に包まれた胎仔
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大網を取り除いた胎仔(ミイラ変成)
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— posted by shimoe-s at 07:08 pm  

セルトリ細胞腫ID:1261287238-

7歳のオス犬、名前がケンジロー、毛が薄くなってきたと来院しました。首、腹部の脱毛と光沢の無いパサついた全身の毛、そしてオスなのに乳首が大きく、皮膚が黒ずんでいます。去勢手術してないのに、あるべき場所に無い睾丸。腹部を触診するとミカン大の腫瘤に触れます。陰睾といって精巣が陰嚢内に下降せず腹腔内などに留まっている遺伝的病態のようです。若いうちに睾丸を摘出しておけば良いのですが、放っておいて腹腔内に長くあると睾丸が悪性腫瘍になることが多い病気です。これは精巣のセルトリ細胞から発生するセルトリ細胞腫が多く、エストロジェンという女性ホルモンを分泌するためオスなのに女性化を起こすようになるのです。ケンジローの脱毛と腹腔内の腫瘤はまさしくこのために起こっている状態です。詳しい検査の結果、幸いに転移、貧血などがまだ起こっていないため、さっそく癌化した睾丸を摘出しました。セルトリ細胞腫の結果、腫れた前立腺の一部と摘出した睾丸を念のために病理検査に送ります。結果は予想通りの病理診断でしたが、悪性の為これからも経過観察はしていかねばなりません。でも春頃までには元のフサフサした毛のケンジローにきっと戻ることでしょう。陰睾の犬は症状が出ないうちに早く去勢手術を受けることが賢明だと考えます。

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脱毛、色素沈着
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包皮下垂、雌性乳頭
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腫瘍化した腹腔内睾丸を摘出しているところ
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左が腫瘍化してない睾丸、右がセルトリ細胞腫の睾丸

— posted by shimoe-s at 02:33 pm  

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