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猫の乳腺癌ID:1272544432-

お腹にシコリがあるということで8歳の雌猫が来院しました。シコリは乳腺腫瘍で左右に5カ所確認できました。猫の乳腺腫瘍は犬と違って発生は少ないのですが80~90%は悪性と報告されています。特にシコリの大きさと悪性度は相関し、完治が可能な大きさは2センチ以内とも言われています。この猫の場合2センチ以上の大きさでソケイリンパ節も腫れている(リンパ節への転移)。そしてエコー検査で子宮にも腫れ物があることが判明しました。相談の結果、当院で出来る最前の方法をとの事で、全乳腺の摘出(リンパ節も含めて)と子宮、卵巣の摘出を行なうことになりました。猫も初発情前に避妊手術をしておくと乳腺腫瘍の発生は少なくなります。何事もそうですがシコリを見つけたら大きくなる前に検査処置するようにしたいものです。この猫の場合、2日入院で退院となりましたが病理検査の結果は乳腺癌(リンパ節転移)、子宮は平滑筋肉腫との診断。後は定期的にチェックしながら再発転移が起きないよう見守っていくことと化学療法に期待していくことになります。
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摘出した全部の乳腺。
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同時に摘出した子宮の平滑筋肉腫

— posted by shimoe-s at 09:33 pm  

特発性振戦病ID:1271410150-

振戦とは”ふるえ”のことですが、寒さ、恐怖、怒り等で起きる生理的なものと病的なものがあります。よく質問を受ける振戦(ふるえ)に老齢犬の特発性振戦病があります。柴犬、柴系雑種によく見られ、10歳を過ぎた頃から歩行時は目立たないのですが静止起立時に後ろ足が”震える”ものです。原因は不明ですが大脳基底核や特定領域のニューロンの変性が認められることから神経伝達障害と推測されています。特に治療法は無く、疲れない程度に自然体に歩行運動をしてもらっています。また、最近診た”ふるえ”に成犬の特発性振戦病(ホワイトシェーカーシンドローム)があります。3歳のマルチーズ、寝ている時以外ずっと震えて歩行もぎこちなくなってきた、と来院されました。血液検査、神経学的検査、犬種、症状からこの病気を疑いました。この病気は神経伝達を行なうエピネフィリン、ドーパミンの前駆物質であるチロシンの代謝異常によると推測されています。またステロイド療法で改善が認められることもあるため免疫疾患の可能性もあるとされています。特発性(とくはつせい)...と、名のつく病気は原因がはっきりしてないことを指します。このマルチーズ、精神安定剤とステロイド治療で改善されてきました。この病気、厳密にはMRI検査、脳脊髄液検査等も行ない鑑別診断しなければならないところですが、諸事情で出来ない場合もあり経験に基づいた治療が優先されることもあるのです。

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後ろ足がブルブル小刻みに震えています。(老齢犬の特発性振戦病)
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寝ている時以外はずっと震えています。瞬き反応も鈍い。(ホワイトシェーカーシンドローム)

— posted by shimoe-s at 06:29 pm  

悪性黒色腫(メラノーマ)ID:1269567522-

“目が見えてないようだ”ということで7歳の猫が来院しました。左前眼房に膿の塊のようなものが見えます。瞳孔は散大し確かに視覚はありません。倉敷の眼科専門医の先生に紹介した結果、腫瘍との診断。最終診断は摘出病理検査をまたなければなりませんが、転移しないうちに眼球摘出がベストであるお話をしました。目を摘出することは誰しも悩みます。飼い主さんは色々考えられた結果、最悪の事態だけは避けさしてやりたいとの思いで手術を決断されました。そして病理検査の結果は悪性黒色腫(眼球内メラノーマ)という診断結果でした。猫の眼における原発腫瘍の中で、最も多いのがメラノーマと報告されています。特に眼球内に発生する悪性黒色腫は眼球内メラノーマと言われ、眼球内に存在する豊富なメラニン細胞が由来の悪性腫瘍です。眼球内メラノーマは腫瘍細胞が虹彩を通過して浸潤あるいは瞳孔縁を超えて浸潤し、その結果、前眼房に腫瘍が確認される事で発見されるケースが多いと言われています。今回の場合がその例でしたが腫瘍は虹彩に限局しメラニン顆粒を含まない細胞が主体であった為、病名のように黒くは見えないメラノーマでした。病理医のコメントとして早期に切除されたことから転移はないと考えられるとのこと。どんな病気も早期発見、早期治療が良いことは解っています。動物の置かれた環境で違いがあると思いますが、今回のように飼い主さんの悔いの無い決断方向が動物の治療には必要なことです。この猫ちゃん、相手が悪性メラノーマだけに眼球摘出で終わりでなく、これからも継続観察治療は続いていくことになります。
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眼球内の右側の薄ピンク色に見えるのがメラノーマ
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摘出した眼球(いつもグロテスクなものばかり載せて申し訳ありません)

— posted by shimoe-s at 10:38 am  

唾液腺嚢胞ID:1269433660-

喉に大きなコブが出来たコーギーが通院しています。コブは唾液腺嚢胞といって唾液腺や唾液管が損傷し周囲の組織に唾液が漏れて溜まった袋のことをいいます。耳下腺、下顎腺、舌下腺、頬骨腺の4つの唾液腺がありますが、このコーギーの場合は下顎腺から起こった唾液腺嚢胞でした。何度か針で粘液を抜いていたのですが走る度にブラブラ、食事の度に食器にぶつかり不自由していました。飼い主さんはコーギー君が高齢だから手術を躊躇されていましたが此のたび決意され手術摘出の運びとなった訳です。

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下顎に出来た唾液腺嚢胞

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摘出した下顎腺の唾液腺嚢胞


— posted by shimoe-s at 09:27 pm   commentComment [7967] 

パーカッションベンチレーターID:1266741027-

呼吸困難な老猫が来院しました。診断の結果、乳び胸と判明。乳び胸とは胸管から漏出した乳び(腸管からの脂肪球を含むリンパ液)が胸腔内に貯留した状態をいいます。このため肺が膨らまず呼吸困難となるのです。胸腔に管を入れ排液処置の結果、呼吸状態はだいぶ改善されたのですが、片肺の一部無気肺がどうしても改善されず今回、呼吸理学療法のパーカッションベンチレーターを使用することになりました。パーカッションベンチレーターは気道を段階的に拡張し肺内の分泌物を流動化し排痰促進し酸素、炭酸ガス交換を向上させます。写真は麻酔下で気管挿管し行っている所とマスクで行っている所です。少しずつ改善がみられていますが時間がかかりそうです。
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— posted by shimoe-s at 05:30 pm  

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