後天性重症筋無力症ID:1250238993-

食欲不振で吐くとの主訴でミニチュアダックスフントが来院しました。当初、当然、消化器系の疾患を疑い血液検査、レントゲン検査、内視鏡検査等を行ったのですが胃、十二指腸には異常は無く、食道内に唾液、泡状分泌物が貯留し炎症が胃の噴門近くに認められた為、逆流性食道炎と仮診断し、坑炎症剤で様子を看たのですが、症状の改善が無く、シワガレ声、瞬きの減少という新たな所見が見つかり、表題の病気が疑われる結果となりました。改めて食道の運動性検査(バリュウム検査)。テンシロン検査。坑アセチルコリン受容体抗体検査を行ったところ陽性と判定。臨床症状と各種検査結果(ホルモン系検査含む)、治療への反応などにより後天性重症筋無力症の局所型との診断に至りました。この病気は神経筋接合部の疾患で骨格筋側のアセチルコリン受容体に対する抗体産生により神経と筋肉の伝達が障害されることによって発症します。食道、咽頭、喉頭、眼筋などの筋力低下が水、食事が飲み込めず吐く現象を起こし(巨大食道)、声が出ず、ショボショボした目をしていたのです。この症例の場合、治療薬である坑コリンエステラーゼの効果が思わしく無く、しかも此の場合、首を高くし起立した状態で飲食させるのですが(食物がスムースに胃に入るようにする為)、この立位姿勢でもむせて吐き出してしまうため、胃瘻チューブを設置し食事管理をすることにしました。誤嚥性肺炎が此の病気の一番の心配の種なのですが、免疫抑制療法のステロイドホルモンが少し効果を現し、吐く動作は減少し目の状態も声の調子も改善してきてくれました。後は抗体が自然消失することに期待して食事管理、飲水管理、ステロイドの上手な使用(賛否両論あり)で治療管理していくことになります。心配されてるご家族のためにも早く元の体に戻って欲しいものです。(ヒトの重症筋無力症は胸腺過形成などの胸腺異常が多く見られるとされていますが、この犬の場合は胸腺に異常は認められませんでした)
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治療前の眼瞼の無力。眠たそうな目。

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治療後....目パッチリ

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胃瘻チューブの胃の中の状態。この管から胃内に食事が入る。
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無力な巨大食道

— posted by shimoe-s at 05:36 pm  

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